新型水性塗料(アクリジョン)を使ってみる

 

 

我が家では幼児と犬達が居ます。
吹付塗装環境は厳しく、滅多なことでは使用できません。

現在使っている田宮のスプレーワーク(旧型)は使い良いですが作動音が大きく、防音を施しても暗騒音か低周波か、あっさりと気付かれて吠えられます。
また臭気の問題があります。子供のころからラッカー系塗料を愛用していましたが、人の1万倍ともいわれる犬たちにとって良いものではありません。

2013
年末、新型の水性塗料が発売されました。GSIクレオスの『アクリジョン』です。
従来の水性塗料に比べ即乾性に優れ、塗膜はラッカー並みに強靱とか。既に模型分野ではインプレッション等が出回っており、切り替えている人が出ているようです。
ところが、鉄道模型の分野ではあまり聞きません。「Nゲージ蒸気機関車」の管理人様が使っているくらいでしょうか・・・

4
月になり、カラーも増えてきました。今後の塗装環境の改善を模索すべく、試してみることにしました。
アクリジョンの塗装は私オリジナルの「ならしの電鉄」色、ルマングリーンとタンを使用します。この2色に独特の濁りとトロミのある薄め液、ツールクリーナーを購入しました。



素材は・・・そのキツ色あいからあまり人気がなく、いつも安値で置かれている鉄コレの羽後キハです。(個人的には好きなんですけどね)

 

これを2両分、温めたIPAで剥離しました。

 

最初、新品のIPAを使ったのですがなかなか塗膜が剥がれず、やむなく汚濁した使い古しを混ぜましたら簡単に落ちました。前から言われているのですが、なぜ古いものの方が落ちるのかは本当に謎です。


 

吹き付けの条件として、今までのラッカーと同様な方法で行います。

 

早速吹き付けを・・・と試しにタン1色で始めましたが、塗装開始5分後に異常が発生しました。
塗料カップから泡が吹き出し、スプレーガンがドロドロに・・・


20
年ほど愛用している田宮のスプレーワークですが、こんな発泡は初めてです。
とはいえ個々の部品にガタが出ているのかもしれません。ニードルから逆流した空気がアクリジョンを発泡させたようです。

車体はまだらになり、作業は中止しました。


再びIPAに漬け剥離・・・しようとしたのですが、全然剥がれません。
塗膜は弱くなるのですが、剥がれないのです。

やむなく歯ブラシ等でガシガシ擦り、残りは耐水ペーパーで落としました。

 

田宮のスプレーワークが不調なので、塗装環境を変更します。
数回使ったままで保管してあった、タミヤのバジャー350II、吸い上げ式のベーシックなもので今は中国コピー品が1000円程度で売っています。これにエアー缶を接続します。ちょっと高いですが、どうも吹付け圧力が強くないとうまく吹けない様でして・・・
吸い上げ式ですから、発砲はないでしょう。


今度は2色吹きを直接試すべく、ルマングリーンから吹き付けます。

「明色は隠ぺい力が弱い」

とのことですが、実験ですので今までと同様、暗色の上に明色を吹きます。
アクリジョン塗料と薄め液は推奨とされる11の配合です。

私の場合、ごく薄くした塗料を薄く重ねる方法を採るのですが、この方法では全く塗料が乗りません。

この塗料、プラ素地に細かに水滴状に着き、時間がたって水滴が馴染み広がっていく(界面活性剤含有?)ような感触なのですが、薄吹きですと細かな粒子が固まり、広がらずに乾燥するため、乾燥後表面が梨地になってしまうようです。


どうも垂れない程度にガッと吹き付ける方法でないと上手くいかない様なので塗装方法を変更します。

かなりダボっと吹いていますが、意外と乾燥が早く、この乾き具合はラッカー吹き付けと感覚が似ています。今度は表面もきれいに塗装できました。

写真は1回目塗装後。暗色ですが隠ぺい力低く、素地を隠し切れません。

 

 

今回は重ね吹きを検証するため、マスキングをします。一つは下半分金太郎風に、もう一つは上下を緑に、と2パターン作ってみます。

思った通り・・・明色であるタンの色がまったく乗りません。1回目吹付け終了時点で、ルマングリーンがわずかに濁った程度です。


2
回、3回・・・何度やっても状況が変わらず、地の色が隠ぺいされません。塗膜は厚くなっているのですが、タンの色には程遠いです。

7
回、8回、9回・・・ここまで吹付けたのは初めてです。影の部分の地色が残っていますが、タンの色に近づいてきましたので、ひとまず終了します。

マスキングテープを剥が・・・剥がれません。
塗り重ねたアクリジョン塗料がテープ自体に浸透し固着しています。ゆっくり剥がしてみるとかなり酷い状況です。

マスキングテープの質が悪かったのか、マスキング上の塗膜で浮き上がったのか、アクリジョン塗料の影響か・・・ラッカーでも多少の吹込みは有りますがここまでだと耐水性のマスキングが必須となりそうです。

また、色を隠ぺいするのに塗り重ねたため、塗り分け面の段差もあり、明らかに失敗作となりました。

 

はみ出し部分を削り、地色であるルマングリーンを筆塗りで補正します。
暗色ですので数回の筆塗りで直すことが出来ました。筆塗りですとエナメル塗料並みに使え、筆ムラが出ないのは便利です。乾くのも早いです。乾いた後は修正できませんが・・・

補正をしたものを組み立てましたが・・・とても不満足な出来ですのでそのまま組立てて細かな部品は固定し、子供のおもちゃに提供しました。


個人的な感想としては、
・無臭で飛沫も少ない
・単色塗り(客車・貨車・SL・旧型電機・軽便等)には有効
・多色塗りには熟練を要する
・マスキングは耐水性のものを使う(セロテープでもいけるじゃないかと・・・)
・塗装順は明色→暗色の順は必須(特に明色の隠ぺい能力が低い)
・塗装機材は確実にメンテナンスされているものを使う
・吹付け圧力の低いコンプレッサーは不可
・ベタ吹きが有効(水滴状に着き、馴染むように定着)
・筆塗りは有効、ただし補正は乾燥前に
・塗膜は即乾性で強固、下地としては優秀
・完全乾燥後のIPA剥離は困難

ということでしょうか。
少なくとも、プラ素地の青緑にルマングリーンを吹いた時点では良好でした。このまま終わらせれば違うオリジナルで良かったかも・・・

白色・黄色等の明色はサーフェイサーすらも隠ぺい出来そうにないので下地は発色も鑑みホワイト系のものを使用することを推奨します。

ガンプラとかキャラクターものには結構使える向きがありますが、カラーバリエーションの少なさもあり、鉄道模型としては(ストラクチャーも含め)熟練が必要かな・・・?と思います。

 

2014/06/0611掲載