「はこてつ」を検証してみる


鉄道模型というものはなかなか取りつき難い趣味であることは間違いありません。初期投資の高さ、精密ゆえの取り扱いの難しさ、個中心で楽しむため横の繋がりが出来ない・・・(その解決と称してこのSNSも出来たでしょうけど・・・)
現状では趣味人、市場ともに減少しています。平均年齢も上がってきているなぁと。

各メーカーとも危機感を感じているのは確かです。その中で検討される上位は「将来展望ある新規顧客」、つまり子供からの入門セット的なものです。ポケットライン然り、鉄コレ然り、Bトレイン然りです。Bトレインがオールインワンの「レイアウトベース」を発売したのもそんな理由だと思います。

ただこれらの焦りの原因となったのはブームが再燃した10年ほど前、入門用のモデルよりも利になる「高額」「限定」モデル、また安価を謳いつつも箱買いを見越したブラインド販売を乱発したことにあります。
市場に出尽くし飽和した模型が過剰となり、コスト高で価格上昇したこともあり、今は生産を絞っても在庫が残り気味です。
そしてそんな販売方法は入門者をいっそう遠ざけてしまったという全く情けない結果と思っています。

鉄道コレクションも最初は安価で手に取りやすく・・・と始まりましたが、現在はちょっと違う方向に向かっているように感じます。
現在仮に「模型を始めてみたい、簡単なのある?」という人が居たとして、何を薦めればいいか、売り場でスンナリ買えるか・・・と考えたら難しいですね。線路と電源はトータルセットなものにしても、車両は・・・


そんなメーカーも錯綜状態の中で出てきたもの、入門用の究極の提案の一つがこの「はこてつ」でしょうか。


これは昨年発売された「鉄道むすめ」でしたっけ、ちょっと微妙な商品でしたが、それをシンプルにしたもののようです。基本的にはキャラクター頭を廃しシンプルな屋根に交換、そのカマボコ状の無垢にシールを張って電車にしてしまおうという、ある意味乱暴な商品です。


子供のために親がすることはシールを張ること、クオリティーで云えばマクドナルドのハッピーセット、いやお子様ランチのオマケ並み。(笑)

商品は量販店で600円(+税)、動力は2800円(+税)くらい、安いのかと言ったら全然安くないですね。しかも車種別で先頭車と中間車のシール1種類づつ、たとえばプラレールでよくある3両編成、これを走行させるには4000円(+税)くらい・・・


全然安く感じません。これってカトーの「KOKUDEN」が買えますよねぇ。
広告にあるように「子供のために」と懐を痛めた割にこの出来では・・・動力の価格を破格に・・・せめて34両でプラレールアドバンス並みにしないと・・・

基本的には先に発売された鉄道コレクション用動力、クモル(またはクル)用のTM24をベースにしています。ですからはこてつ動力の開発に苦労した訳ではなく、TM24が開発されてそこからはこてつ動力に流用する方向になったと思います。

やっぱり、これは最初に出た「キャラクター頭」の動力用を主として販売したとしか思えないのです。いちおう建前的にこういう商品も出してみました的な。

もう買ってすぐに憂鬱な気分に苛まれましたが、気を取り直して、この御苦笑・・・もとい、極小の動力の可能性について考えてみます。


「箱」を外した動力部ですが、上下に慎重に引っ張ると簡単に分解します。台車部分・はこてつ床板・モーターと3つに分かれます。

 

TM24だと台車を左右に振る床板ですが、動かないようになっています。モーター側の端子に配線を巻きつければハンダ付けなしで点灯化も出来そうです。
はこてつ目的以外で動力ユニットだけ欲しい方はTM24を買って分解したほうが安いですね。予備の台車部品取れますし。

床板を外して再び組立て、最少サイズです。幅12mm、長さ24mm、台車上高さ15mmです。台車上にモーターが乗っているので重心は高めになります。


このサイズですと、ナロー動力としては少々使いづらいです。
加藤や酒井のディーゼル機のようなセンターキャブは作れません。なので、現在販売停止になっているキャラメルナイン車両(保線車両/酒井5t/酒井C4)の代替動力としては向いていないと思います。

ただし箱型キャブや2軸路面電車、モーターボックスの形状をを生かしてスチームトラムのような構造のものなら作れると思います。小型テンダーをこしらえてユーレイにして、チビSLの駆動とか・・・
また集電軸が車軸側にあるので鋳造風の台車枠の再現ができます。共通規格である一般の台車枠も使えます。車輪加工が出来ればロッドも植えられるかも・・・

動力は安定の鉄コレ動力・・・といいますか、なかなかのものです。スローもよく走ります。パワートラック的には良い性能です。ただし、トラクションゴムがないので平坦専用ですね。


さて、検証を終えどうしようかと悩みましたが、何かの動力に転用するとして、それまでは普通に「はこてつ」にしておきましょう。T車付属のシールでは先頭車+中間車ですし、どうしますか・・・(注:2両で簡単に終わらせるならトワイライト編成をおすすめします。機関車+客車で完結しますから・・・)

せっかくですから地元の電車でも・・・と東武鉄道のホームページをのぞいたら、各車両のペーパークラフトのダウンロードサービスがありました。その中で昨年デビューし急速に勢力を強めているアーバンパークラインの60000系がありました。のっぺりとしていて「はこてつ」向けです。(笑)
さっそくダウンロードして制作に取り掛かりました。


まずはカマボコの形状に合うように縮尺を調整し、カラープリンターで印刷します。今回はA4サイズで、縮尺は40%に設定しました。

裏に両面テープを張り、現物合わせで大まかにカットします。運転台と環通路(前後妻面)は上下が少し足りないので1mmほど下の場所まで残します。
車体側面ですが、運転台扉から合わせると窓が途中で切れてしまいます。今回はバランスと手軽さを重視し、両開き扉を中心部とし前後対象にしました。屋根のクーラーも中央です。パンタグラフは安全性と目立たないことを理由に省略しています。


最初に前後妻面を貼り付け、屋根のRを仕上げて黒色の側面をサインペンでなぞります。側板〜屋根〜側板の一体シールをくるりと被せるように貼り付け、完成です。


同様にT車も作成し、簡易的に2両編成で就役中です。
我が家初の東武電車はコレかぁ・・・(笑)
この方法なら全国津々浦々の鉄道でペーパークラフトがあれば作れますね。基本箱型ですけど・・・


スーパーミニカーブレールで試運転です。(この場合はアーノルドカプラー不可)
低速が効いているので楽しいです。もっと小径にしてもいいでしょうがカプラーを長めに改造しなければいけませんね。

動力としてはかなり使えそうです。対象物がこの箱サイズに開口できれば何でも走らせられます。車でも、戦車でも、船でも、キャラクターものでも・・・
被せるネタが出来たらまた購入しようと思います。



2015/04/2022掲載